スタート
当作品は音声が再生されます
予めボリューム、イヤホンをご確認ください。
ある人気のない山奥で車が止まる。
少しそわそわとした様子の運転手が
トランクに手をかける
「大人しくしてた?」
「ううううううっ……!」
開かれたトランクには両手を縄で縛られ口を
ガムテープで塞がれた少女がいた。
厳重に縛った縄をほどこうと必死で
もがき続けている。
「苦しいよね?
すこし外してあげるけど、騒いだらダメよ」
口のガムテープから剥がした
「ぷはっ!」
「はぁ…はぁ…」
「ごめんね。こんな狭いところに閉じ込めて」
「あの……おうちに帰して……ください」
少女は震える声で、懇願するが運転手は
首を横に振る
「ごめんね、暫くは自由にしてあげられないの」
「命を奪おうとか、そういうことはしないから
安心してね」
などと言って、少女も安心するほど単純
ではない。
「とりあえず、今開けたのは少し食事と水分
摂ってもらおうと思ってね」
と言って、ビニール袋から食べ物と水を取り出す。
「はい、お口開けて」
「んんっ……」
少女は、さっきまでずっと口を塞がれていた
せいで口周りが涎でべたべたであるのに気付
いて恥ずかしそうだ
「あぁ、少し涎ついてるね」
運転手は、タオルで口周りをぬぐってから
ちいさな一口サイズのパンを口に近づける
「解いてくれないんだ……」
口だけで、まるで犬みたいに。
恥ずかしそうに口を結ぶ彼女だったが
長いこと閉じ込めれた空腹には勝てず
次第にパンを少しずつ齧っていく。
彼女は暗いトランクの中で時計もなく実感
はなかったろうが、長く閉じ込められていた
彼女も相当の空腹を感じていたことだろう
少しパンを近付けるとむしゃぶりつくよう
に食べていく
「ふぅ……」
お腹も落ち着いたところを見計らい、運転手は
布とガムテープを取り出す。
「それじゃあ、落ち着いたところでまた
口をふさがせてもらうわね」
そう言われ、少女は少しビクッとなる。
しかし抵抗したところできっと無駄だろうと
後ろ手の縄が嫌と言うほど伝えてくる
「んっ……」
観念したように口を開けたところを見計らって
まずは口に布を詰め込む。
「むうううううぅっ!」
口いっぱいに押しこまれ、うめき声をあげ
るにも関わらず運転手はご満悦だ
「さぁて、じっとしててね」
口の布を吐き出さぬようにガムテープを
上からピッタリと貼る。
「んんんんっ!」
「んんんんっ!ううううっ!」
精一杯、轡の奥から叫んでみるが空しく
口の中の布に吸い込まれてしまうのだった
「それじゃあ、また。少しそこで大人しく
してて、もらうわね」
「んんんんんんっ」
無情にも再びトランクのドアは閉められ再び
車は少女を積んで走り出すのだった。
fin